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創業者講演会(創業者創出ミーティング)

  • 2019/01/31 UP

    category:サービス業(他に分類されないもの)

    株式会社シュアール 代表取締役

    大木 洵人 氏

    "聴者と聴覚障がい者の対等な社会を目指して"

    https://shur.jp/

事業紹介 創業のきっかけ 創業後の苦労 将来の夢、志 若者へのメッセージ 

事業紹介

 シュアールは東京の品川区に本社がありまして、大きく3つの社会問題に対して事業を展開しております。1つは「手話通訳が足りない」という問題です。これは遠隔手話通訳で対応しています。遠隔手話通訳というのはテレビ電話をつないで手話通訳をするという単純明快な事業です。耳の聞こえない方がお店に来店されて、どうしようか困ったというときにこのシステムにつなげば、日本語で伝わるというわけです。もちろん反対に、耳の聞こえない方から聞こえる方への通訳もできます。お客様はJR様やアディダス様、銀行、行政機関などがあります。また、「手話から引ける辞典がない」という問題には手話キーボード開発を、「手話の娯楽が足りない」という問題にはNPO法人の事業として手話のオンラインTVや手話ガイドアプリ開発を通してアプローチしています。

創業のきっかけ

 最初のきっかけは、中学2年生の時にNHKの「みんなの手話」というテレビ番組を観たことです。手話って本当に美しいなと思いました。その後、手話と関わる機会はしばらく無かったのですが、大学に進学して改めて「手話を学びたい」と思い、手話のサークルを立ち上げることになりました。そこで大学の先輩である一青窈さんから、紅白歌合戦で歌う歌詞に手話をつけたいという依頼を受け、手話バックコーラスとして出演する機会を頂きました。サークルを立ち上げて間もない頃で、これは本当に偶然の出来事だったのですが、この経験が、私の人生に大きな変化をもたらしました。半年以上経ってからも手話関係の雑誌から取材の依頼が来たり、手話歌でのコラボの企画を頂いたりと問い合わせを多く頂き、嬉しかった半⾯、半年以上前の話が取り上げられ続ける事に少し違和感を覚えたのです。何故なのかと考え、手話の娯楽が少ないことに気づきました。そこで私は手話で楽しめる娯楽をつくろうと、手話ネットというボランティア団体を立ち上げ、手話のテレビ番組をつくり始めました。内容は旅番組で、旅をしながら手話や聴覚障がいにまつわる社会問題を発見していくというものです。たとえば、耳の聞こえない人は110番、119番ができません。また、風邪をひいて病院に行きたくても、手話通訳を派遣してもらうのに時間がかかってしまう。実は初めて手話を知った中学2年生の時、私は戦場カメラマンに憧れていました。戦場写真から伝わってくる、日本では感じることのない命の危険さに衝撃を受けたからです。しかし、手話や聴覚障がいにまつわる問題に気付いたときに「戦場写真で世界に真実を広めたいなんて思っていたけれども、本当はこんな身近に広めるべき真実があるじゃないか」と、自分と社会に怒りを覚えました。その後、大学の授業で手話キーボードや遠隔手話通訳というものをつくり、それらのビジネスモデルが様々なコンテストで賞をいただきました。こうして私の「思い」、「怒り」と「実際に何をしたらいいのか」という3つが重なり合って、株式会社シュアールを立ち上げることにしたのです。

創業後の苦労

 会社の危機的状況というのが何度かありました。ひとつご紹介すると、会社のパートナー企業が倒産するという事態に陥ったことがあります。その企業は大きなビルの1フロアを借りていて、いつも綺麗なオフィスで迎えてくれましたが、お金の支払いが遅れたことがあったのです。こちらから問い合わせると「手続き上の問題で遅れています」と言われました。しかし、あるとき先方の社員の方が個別に会いたいと言ってきました。話を聞いてみると「実はうちは経営状態が良くない」とのことでした。その2ヶ月後、その企業は倒産しました。しかし、2ヶ月前に準備を進めていたので、致命的な打撃を免れることはできました。社内の経営状態を外部に漏らすのはリスクが高いですから、彼の勇気には大変助けられたと感謝しています。

 それ以外にも金銭的に困窮したときがありましたが、カフェで「私はこういう事業をしてきたが、どうしてもお金が足りない。助けて欲しい」と話したら、事業の内容に共感し資金援助をしてくださった方もいました。ご本人の意向で名前は伏せますが、本当に挙げたらきりがないくらい多くの方に助けていただいています。

将来の夢、志

手話のことはすべて取り組むという姿勢でやっていきたいと考えています。これからの時代のビジネスは超多業種を幅広く展開するモデルと、専門性が高く突出しているモデルの2パターンになり、中途半端なビジネスモデルは潰れるでしょう。だからこそ手話という一本軸に関しては、やれることすべてをやらないと勝てません。

 また、観光にも力を入れています。耳の聞こえない人はよく観光をします。飛行機も新幹線も障がい者割引が適用されることも、旅行好きの人が多いことに関連しているかもしれません。しかし、観光地でのコミュニケーションができず、満足に楽しむことができないというミスマッチが生じています。このミスマッチに着目し、GPSで位置を確認し、動画で手話の観光ガイドを見ることのできるアプリを開発しました。たとえば鎌倉の大仏に行くと、そこで大仏の説明を手話で受けることができます。

 2020年には東京オリンピックが開催され、外国人の観光客も多く訪れるでしょう。ただし外国の手話は日本と異なるので、当社のサービスをそのまま適用させることは難しいのです。海外にもシュアールのように遠隔手話通訳サービスを提供している同業者がおりますので、将来的にはシュアールのサービスと海外の遠隔手話通訳事業者のサービスをつなげるシステムを作れたら、と考えています。耳の聞こえないアメリカ人がきたら、アメリカの同業者へ。ドイツの方はドイツの同業者へつなぎます。そうすることで、耳の聞こえない方がどこにでも旅行に行ける環境をつくりたいのです。

若者へのメッセージ

 私の大先輩であるNPO法人フローレンスの駒崎さんの仰っていた、「社会を変えることが仕事になる」という名言がありまして、私にとても大きく響いた言葉です。それまでは仕事というのは、今ある仕事を誰かからもらったり、提供したりするというイメージを持っていましたが、それだけではないということに気付かされました。ただし、この言葉は私には重すぎると感じますので、私から皆さんには「好きな事を仕事にする」という言葉を贈ろうと思います。自分の好きなことを仕事にできれば、どんなことがあっても「好きなことだから」と思えますからね。

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