創業者講演会(創業者創出ミーティング)

  • 2020/01/08 UP
  • category:サービス業(他に分類されないもの)
"ママだって自分らしく働きたい"

令和元年8月31日(土)開催 女性創業者創出ミーティング ぐんま男女共同参画センターにて(とらいあんぐるんサロン「夢を叶える女性のための交流会」との合同開催)


ento株式会社 代表取締役

馬場 早苗

http://ento.biz/

事業紹介 創業のきっかけ 創業後について メッセージ 
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  • 事業紹介

 法人向けのパンフレットやHP、ロゴなどの販促ツールの制作や広報の代行などを行う広告代理業を運営しています。自分達のライフスタイルに合わせて働いているフリーランスの女性がentoに登録し、案件に応じてチームを作り仕事を請け負っています。消費者にもっとも近い立場であることによる視点、女性ならではのきめ細やかさを活かしてブランディングやアピールをおこなえることが強みです。
 また、ライフスタイルの変化が大きい女性が働きやすい社会にしていきたい、という思いを持って活動をしています。

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  • 創業のきっかけ

 大学卒業後、地方の印刷会社にデザイナーとして入社しました。印刷業界は非常に激務で、いわゆるブラックといわれる業界でした。会社で配布された社員の心得の冒頭に「有休はとらない」。制度として有休は存在するのですが、「使うな」ということです。その会社に6年ほど勤めていましたが、一日も有休を使ったことはありませんでした。連日、残業は深夜まで及びましたが、給料は固定給で残業手当もありません。その会社は退職しましたが、その後も印刷業界を中心に同様の働きかたをしてきました。そのような業界でなぜ働き続けてきたのかというと、結局のところデザインの仕事が好きなのです。デザイナーは自分の天職だと思っています。
 しかし、仕事を続けるうえで大きな問題に直面しました。妊娠です。プライベートにおいては、それまでの人生の中で最もうれしいことでした。ですが、仕事に関しては違いました。残業できることが前提という会社なので、残業ができない人材は不要なのです。女性は結婚や妊娠で辞めていきました。しかし、産後の再就職は困難なこと、育児休業給付金をいただきたいことなど様々な理由から、育休を取り、仕事を続けたかったのです。そう会社に伝えると、様々な切り口で正社員を辞めるよう促されました。断固として戦い、嫌な思いをしながらも、最終的には育休を取得できることになりました。
 復帰後、基本給は減らされ、育休前についていた肩書きは告知もなく無くなり、責任のある仕事も任せてもらえなくなりました。仕方のないことだと頭では分かっていても、非常に悲しかったです。また、残業が減ったとはいえ、フルタイム勤務でしたので手が回らず、仕事も育児も家事も、すべてが中途半端。何一つ満足にできない自分に対し、不満と愚痴しかないという日々を送っていました。
 復帰しておよそ1年後、第2子を妊娠しました。産休に入り子どもと過ごしている時も、復帰する日を想像すると苦しくて辛くて仕方がありませんでした。会社に戻るしかないのか、他にできることはないのかー。本当は、何年も前から子どもができたら家で働こうと思っていたのです。しかし、自分で仕事を取り働くために何をすればいいのか分からない・・・、結局私は会社に勤めるという選択肢しかないのだ、と堂々巡りでした。
 そのようなときに、太田市の広報誌で「太田なでしこ未来塾」という女性向けの起業塾の案内を見つけました。もしかしたら、会社を辞めて働くヒントがあるかもしれないー。一人で申込む勇気すらなく、同じ時期に出産で会社を辞めた女性を誘いましたが、断られてしまい、踏み切れずに悩んでいました。悩んでいるうちに、定員が埋まってしまったらどうしようという別の不安にかられ、思い切って申し込んだのです。
 驚いたことに、参加者の中に妊婦さんが3人も。「これから出産しようとしている時に、さらに起業しようと考える人がこの世の中にいるのか」と衝撃を受けました。他にもNPOを作る手続をしている方、60代で大学に行き直している方など、それまでの会社と家の往復だけでは出会えなかったような方々が、たくさん集まっていました。自分で働くヒントを得るどころか、人生を変える機会になりました。
 塾の講義の中で、原体験(その人の生き方に大きな影響を与える幼少期の体験)を振り返りました。私の原体験は、「母」でした。
 私が幼い頃は母親といえば専業主婦が当たり前でした。ですが、私の母は、今でいうフリーランスのイラストレーターをしていました。当然周りにはそんな母親を持つ友達はいません。自慢の母でした。自身の原体験が母だと気付いた時、「私も子どもの自慢の母になりたい」と思うようになりました。娘が2人いるのですが、同じ女性である子ども達に「女性だからといって諦めずに、自分で自分の道を切り開いていく姿」「働く母の姿」を見せたい。女性だから、妊娠したからといって、不当な扱いを受けることのない社会になって欲しい。そう考えた時に、このまま会社で働き続けるのは違うと感じたのです。会社に対し文句を言いながら、雇用に対する安心感にしがみついていたのです。自分が変わらなければ状況は変わらない、と痛感しました。
 育休が明け、そんな想いを抱えながら会社に復帰。しばらくして、広報誌で「おおたシティープロモーション認定事業募集」という記事を見つけました。太田市の魅力を掘り起こす事業に対し、補助金を交付するというものでした。起業塾で知り合い、立場や環境、悩みが似ていることから意気投合したフリーライターの友人と、この事業に応募し、もし採用されたら一緒に何かやってみないかと相談。仕事の合間をぬって準備をして応募し、審査員の前でプレゼンを行い、見事認定されました。認定をきっかけに独立しようと会社を退職。同時に「ento」という任意団体を立ち上げ、この事業で「おおたパンめぐり」というフリーペーパーを制作しました。ありがたいことに増刷するに至り、最終的に2万4千部発行しました。新聞をはじめとするメディアにも取り上げていただき、知名度が上がったり、人脈が広がったり、予想外の効果がありました。

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  • 創業後について

 会社を辞めて独立・・・というと響きはいいですが、最初の3ヶ月はこの「おおたパンめぐり」の制作しかしていませんでした。営業活動もしていないために仕事も無く、収入もゼロです。しかし起業塾に参加していたときに同期の方から仕事をいただいた経験から、「人との繋がりが仕事に繋がる」ということを身をもって学んでいたのです。仕事の依頼をしてくれる可能性のある方と繋がることが、仕事を得るための第一歩。サービスのターゲットとなる経営者の方々が集まる懇親会などに積極的に参加し、名刺交換をしていきました。3年間で配布した名刺は1,000枚を超えています。初めのうちは参加してもほとんど動けずに隅の方でただ黙って眺め、たまたま目が合った人と名刺交換して帰ってくる、それでも気を遣いすぎてぐったり、という状態でした。
 また、学びと人脈を求めて、群馬県主催の創業プラン実現支援塾と、田中仁財団主催の群馬イノベーションスクールという、2つのビジネススクールにも参加しました。創業プラン実現支援塾では、ビジネスプランをしっかり形にすることができ、多くの支援機関の皆さんの前でプラン発表会を行いました。群馬イノベーションスクールの母体である、群馬イノベーションアワードではファイナルステージに進出しました。
 太田市の起業塾と同様に、この2つのスクールに参加していなかったら、今の私はありませんでした。それほど大きな影響を受けた場所でした。行動力や熱意を持った、たくさんの方々と繋がることができました。
 そして2018年9月、任意団体として活動していたentoを法人化するに至りました。「個人・女性・デザイナー」という肩書きは法人相手に仕事をする上で弱く、将来を見据えて法人を設立しました。「夢を叶えた」と紹介されていますが、叶えたというにはまだまだ遠く、今も必死にもがいているところです。

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  • メッセージ

 多様な仲間と出会ったことで、自分はリスクを恐れてばかりで何もしていないということに気付かされました。新たな世界に踏み出すことが怖いのは、そこに対する知識が無いだけだったのです。未知の世界は、誰だって不安で怖いもの。自分で勝手に、自分にはできないに違いないと悪い想像をして、怖いイメージを創り上げ、見ようとしていなかっただけでした。一歩踏み出すことで新たな世界も人脈も広がり、その繋がりからさらに外の世界を知ることができました。
 日本人は、失敗しないようにあらゆる想定をして、万全の準備をしないと動かないことが多いです。しかし、初めて行うことにどのように万全の準備をするのでしょうか。経営経験の無い人が、経営に乗り出すために万全の準備を行うなど、できるはずがありません。まず一歩踏み出す、それが大切なのです。一歩踏み出して行動してみたら、足りないことが見えてきます。次に必要なことが分かってきます。その必要なことを埋めるために、また新たな努力をして、どんどん自分に力が付いていくのです。もちろん、努力をしたからといって必ず報われるとは限りません。世の中がそんなに甘くないことは重々承知しています。大きな失敗もたくさんありました。頑張ったものの結果が出なかったことも、信じていた人に裏切られたこともありました。しかし、失敗したという「経験」は残ります。失敗したからこそ、何が悪かったのかに気づき改善できます。成功した人というのは、成功するまで失敗を重ねて、チャレンジを続けられた人のことなのです。
 必ずしも起業を勧めるわけではありません。人により、合う合わないもあります。お金の問題、家庭の問題、多くの問題もあるでしょう。起業したからこその悩みや不安もたくさん出てきます。しかし、もし現状に不満があって何かを変えたいと思っているのであれば、ほんの小さな一歩でいいので、ぜひ踏み出してみてください。
 たった一度しかない人生です。やらずに後悔するよりも、ぜひ自分自身で行動し、道を開いてください。

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