創業者インタビュー

  • 2017/11/07 UP
  • category:卸売業、小売業
"世界と勝負したい!「新たな日本の繊維産業のビジネスモデル」への挑戦"

株式会社 フクル 代表取締役

木島 広

http://fukule.co.jp/

創業のきっかけ 事業が成功した理由 失敗から這い上がった… 座右の銘 将来の夢、志 
これから創業に挑戦す… 
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  • 創業のきっかけ

 両親が縫製業を営んでおり、幼少期から将来は独立して社長になりたいと思っていました。専門学校でマーチャンダイジングを学び、卒業後にデザイナーブランド、大手企業などで縫製を中心にアパレル業界に携わりながら、起業するために必要となる多角的な経験を積みました。

 桐生市をはじめとする国内の繊維産業の活性化を目指し、平成23年に独立。平成27年にフクルを設立しました。

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  • 事業が成功した理由

アパレル業界に技術革命を!マスカスタマイゼーションが実現する新しい繊維産業

 ちょうど子どもが生まれたタイミングで独立しました。そのとき子育てに抱っこ紐を使っていたのですが、デザインが好きになれませんでした。そこで、デザイン的に魅力のある抱っこ紐を完全オーダーメイドで作り、インターネットで販売しました。採算は取れていましたが、このビジネスモデルでは自分たちだけで完結してしまうため、地元の繊維産業を巻き込めませんでした。

 そこで、桐生の機屋さんの倉庫に眠る在庫を活用して売るビジネスモデルを考えました。群馬ベンチャーサミットや群馬イノベーションアワードでアイデアを評価をして頂いた一方で、私自身はこれでは利益が上がらないとも思っていました。プランのブラッシュアップが不足していたからです。

 その後、ある投資家の方と知り合いになり、便利になっていく未来の生活像を共に語り合う中で、ある言葉を投げかけられました。

 「なぜ、服を作らないの?服だったら、電子レンジに入れて作れるんじゃないの?」

 その発想に触れた瞬間、全身に鳥肌が立ちました。従来のビジネスモデルでは、服を作る仕事はロスが多いために決して儲かるとはいえず、現実的な選択肢から外していました。しかし、ファッションの個別化がさらに進む将来、大量の個別生産に対応できる革新的なビジネスモデルができれば大きなチャンスになります。

 「できます!」、興奮気味に即答しました。今まで結びつかなかった私の職務経験、織都・桐生のリソース、さらに国内の繊維産業の活性化が、革新的なビジネスモデルによって未来へとつながる「一本の糸」として撚れた瞬間でした。

 一方で、それを実現するためには、限られたコストを再配分し、核心部分への集中投下とそれ以外の省力化が必要になります。技術的にも、ビジネスモデルとしても、実現するために必要な「最後の1ピース」に苦慮しました。

 解決するヒントは、投資家から紹介されたドイツの「Industrie 4.0」にありました。受注から生産までを一本のシステムで管理し、時には複数の工場が連動しながら、大量の小ロットを最新のITを活用して生産可能にする「Industrie 4.0」は、まさに実現しようとしていたビジネスモデルでした。

 1つのデザインを大量生産して利益を上げていたアパレル業界だからこそ、個々のニーズに応えるマスカスタマイゼーションが極めて高い付加価値を生み出します。これを実現するために必要な技術革新が急速に進んだことで、アパレル業界でも革新的なビジネスモデルが現実的になったのです。日本の繊維産業が生き残り、さらに世界と戦うためには、「これしかない!」と思いました。

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  • 失敗から這い上がった経験談、苦労から学んだ経験談

先行投資が難しい!繊維産業にマスカスタマイゼーションを取り入れる挑戦

 服を売る事業者にとって、在庫ロスの極小化は経営課題であり、当社のビジネスモデルとの相性は抜群です。そのため、多くの事業者から新しい提案や要望をいただくようになりました。とはいえ、すべての提案や要望に応えられる生産体制が整っていないのが現状です。

 国内では自動車産業などを中心に、作業工程の機械化、IT化によって世界的な競争力を獲得しています。ただ、繊維産業はこれらを取り入れにくい産業構造でもあります。世界的な価格競争にさらされて利益を出せなくなり、最新設備やIT化に再投資できなかったことが、日本の繊維産業が衰退してきた根本的な原因です。

 ただ、かつて繊維産業が大量生産時代に突入した時に、桐生でも数世代前の繊維工場が技術革新に挑戦し、それを成し遂げて世界で勝負してきた歴史があります。数世代を経て利益を出せなくなった従来の生産体制を、高い付加価値で勝負できるマスカスタマイゼーションへと転換すべく、ITなどの新技術を取り入れた生産体制の構築に挑戦していきます。

 

東京ではなく、桐生にある「縫製工場の木島さんの息子」だから助けられたこと

 織都・桐生市は、国内でも有数の「服を作るリソース」がバランスよく凝縮された街です。一方で、その規模は年々縮小し、高い技術力を持った工場や職人さんが少なくなっているのが現状です。縫製工場の息子として、身近に桐生の様子を見続けてきたことで、桐生と同じように疲弊し、衰退しつつある国内の繊維産業の力になりたいという思いを強めてきました。

 よく、繊維産業は人材不足と言われます。それは「職人」が不足しているのであって、繊維産業に興味がある人はいるのです。旧来の大量生産型ビジネスモデルでは、1つのパターンで大量に服を生産することで、製作工程にある煩雑な作業やそれに伴うコストを抑えていました。しかし、旧来モデルでは価格競争に勝てず、高い技術力を生かした付加価値の提供ができないのです。

 「服を縫う」仕事をしたくても、その前後にある煩雑な作業に時間とコストを奪われていては、優秀な技術をもつ人材が育たず、給料を上げることもできません。かかるコストを変えずに給料を上げるためには、技術が求められる手作業へのコストを手厚くし、それ以外のところにITを取り入れて省力化する方法が最適です。これを実現するためには、繊維産業のビジネスモデルを根本的に変えていく必要があります。

 私が目指しているのは、個々のお客様に合った1つのパターンで1着ずつ、それを多くのお客様に向けて作るというものです。旧来のままでは、とてもビジネスとして成立するものではありません。しかし、ネックとなっていた部分に最新のIT技術を投下することで、煩雑な作業やそれに伴うコストを抑えることが可能になります。つまり、限られたコストを手作業に集中させやすくなることで、高い技術力に裏付けされた付加価値の高い製品をお客様に提供することができます。もちろん、給料を上げることもできるため、魅力ある働き口として繊維産業全体で雇用を確保することも見えてくるのです。

 ただ、そのために残された時間は限られています。実家の縫製工場でも、80代の従業員が現役で服を縫っています。桐生市内などにある工場に協力を依頼すると、「木島さんの息子さんだから」ということで快く協力してくださる技術力の高い工場があります。こうした高い技術力にはいつも助けられ、感謝していると同時に、素晴らしい技術を次世代に継承させ、成長していくためにも、チャンスは「本当に今しかない!」と考えています。本来であれば、堅実に事業を拡大させたいところですが、時代を先読みしながら一足飛びで事業を展開する必要性と難しさを感じています。

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  • 座右の銘

「真摯」

 正しいことが存在しない社会は維持できず、正しいこともまた時代の流れで変化していきます。ただ、正しいことに対して「真摯」であることは不変です。

 ものづくりに対しても「真摯」な構造を作る必要があり、お客様に対してもサービスを提供することが求められます。「真摯」で在り続けることで、時代に合った社会貢献をしていきたいです。

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  • 将来の夢、志

フクル発、世界へ!変わる時代に合わせた繊維産業の新ビジネスモデルで勝負

 他業種で成功事例が増え始めたマスカスタマイゼーションを繊維産業に取り入れ、桐生をはじめ日本の繊維産業がもつ魅力と高い付加価値を世界に発信していくことが私が思い描く将来のビジョンです。

 ファッション業界の5年後、10年後は、ファストファッションとマスカスタマイゼーションの二極化が進むと先見します。その中で、ラグジュアリーブランドの1点生産を当社が担えるように、企業としての力を高め、日本の繊維産業全体が連動して世界と勝負できるようなビジネスモデルを構築したいです。

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  • これから創業に挑戦する人へ一言

創業には不退転の決意を

 生半可な気持ちなら、創業はやめた方がいいと思います。

 ただ、覚悟を決めたのであれば、成功に向かって諦めないで頑張ってほしいです。

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