創業者インタビュー

  • 2015/08/04 UP
  • category:宿泊業、飲食サービス業
"伝統の温泉旅館文化を、分ける暖簾に込めて"

佳元(四万温泉) 佳乃や(草津温泉) 宿主

田村 佳之

http://yoshimoto.jp/

http://yoshinoya932.com/

事業紹介 創業のきっかけ 事業が成功した理由 失敗から這い上がった… 座右の銘 
将来の夢、志  これから創業に挑戦す… 
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  • 事業紹介

 私どもは、四万温泉にある温泉旅館「佳元」、さらに昨年オープンいたしました草津温泉の湯畑にある「佳乃や」を経営しています。「佳乃や」のテーマは、「カジュアル旅籠」です。従来の温泉旅館よりリーズナブルに、そして快適に過ごす空間を提供したいという思いでオープンさせていただきました。

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  • 創業のきっかけ

四万で始めるなら、やはり温泉旅館

 元々、四万温泉で育った私は、両親も地方公務員であり、旅館をやるつもりはありませんでした。私が23才の時に、両親が民家を建てるために購入した土地で「何か社長をやりたい」と思い、何ができるかを考えました。旅館でなくてもよかったのですが、ここに土地があるということは、温泉旅館をやれと言われているようなものでありました。旅館の建物を建てながら、他の旅館さんで1年間修行させていただき、その後「佳元」を始めました。

 

念願の2軒目は、日本一の草津温泉で

 いつかもう1軒構えたく、取引先の銀行さんに7~8年前からずっとお願いしていましたところ、2年前に草津温泉で事業承継するお話がありました。日本一の温泉地で勝負ができることを楽しみに、そちらでやらせていただく運びになりました。

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  • 事業が成功した理由

1泊素泊まりのアーバン型温泉旅館

 事業が成功したかどうかまだ分かりませんが、今までにない感覚の旅館づくりが好評をいただいた理由かと思います。それは時代のニーズと、草津温泉という土地柄が可能にしてくれました。従来の温泉旅館は、1泊2食型のサービスです。それを草津温泉では、1泊素泊まりで朝食無料のサービスとしました。つまり、従来のリゾート型から、アーバン型のビジネスホテルのようなサービスに転換しました。

 

ニーズの掘り起こしで地元との触れ合い

 従来の1泊2食型であれば、どうしても夕食が伴い、お客様のチェックインの時間帯が限られます。しかし、素泊まりで夕食をお出ししないことにより、深夜12時でもチェックインできる体制を整え、お客様の自由度や選択肢は広がりました。

 また、草津温泉には、非常に多くの飲食店があります。お客様が地域との触れ合いを求められることも多く、地域で夕食を召し上がることで、地元のお客様と触れ合える機会が多くなりました。お客様のニーズとこのサービスが、非常にマッチしたと思います。これは、地域に飲食店が豊富な草津温泉の土地柄を活かせたからだと思っています。

 

半歩先の気遣いは、小さな積み重ねから

 私が創業した四万温泉の旅館では、お客様カルテをつけ、お客様のご様子、好み、どんな話をしたのかなどを詳しく記録しています。再びご来館される場合、そのお客様カルテを元に、半歩先を行く気遣いが可能となります。食事であれば、お客様の好みやアレルギー、飲食のペースなどに合わせてお料理をお出ししています。前回ご来館された時のお話をすると、お客様が非常に喜ばれます。ほんの小さなことですが、この積み重ねこそが私どもの財産です。

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  • 失敗から這い上がった経験談、苦労から学んだ経験談

狭く、坂の続く草津の道をアシスト

 草津の温泉街は、坂道で道幅も狭く、とにかく土地がありません。特に、湯畑周辺には駐車場がなく、観光客が利用できる駐車場は、湯畑から少し離れたところにあるため、不便さを感じるお客様もいらっしゃるのではないでしょうか。幸い、私どもの旅館は、湯畑の近くにありますので、日中だけでもご利用いただけるように検討中です。また、急な坂道でも草津の街を楽しんでいただけるように、電動アシスト付き自転車を貸し出しています。こちらの自転車は、特に海外のお客様に好評です。

 

スタッフの確保の苦労を逆転の発想で


 また、場所がないのは、旅館で働くスタッフも同様です。外国人のスタッフを中心に、旅館の近くに居住場所がないことが課題です。スタッフが安心して働けるように、寮を借りて住む場所を提供しています。

 そもそも、そのスタッフが集まらないことにも苦労しました。旅館業に携わりたいと考える日本人の若者が少ないのが現状であり、業界の「悪いイメージ」が障害になっている印象もあります。集めようと思っても集まりませんので、少人数でサービスを提供できるように考えました。その苦労した経験を活かして、ローコストオペレーションによるサービスを提供しています。

 一方で、今後は若い方々にも、日本の伝統的文化のひとつ、温泉旅館で働きたいと思ってもらえるように、労働環境や福利厚生を充実させ、イメージアップを図りたいです。

 

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  • 座右の銘

 

「宿は人なり」
 

 時代が流れ、あらゆる技術が進歩してまいりました。無論、旅館のオペレーションにも、最新の設備などが入り、進化を遂げて7ます。とは言いましても、最終的にお料理をお持ちしたり、お客様と触れ合ったりするのは、やはり私どもスタッフです。

 スタッフあっての旅館だと、私は思っています。したがって、旅館のファンというよりも、むしろスタッフのファンを増やしていきたいのです。

 

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  • 将来の夢、志 

旅館の暖簾分けで温泉文化の継承を

 「旅館の暖簾分け」をしたい、それが私の将来の夢です。今回、草津で「佳乃や」を始めるにあたり、四万の「佳元」で6年間勤めたスタッフに、支配人を任せることにしました。「佳乃や」は、私の旅館というよりは、その支配人の久保田の旅館ととらえています。

 旅館を創業する人は、非常に少なくなりました。しかし、群馬県には人気の高い温泉と、そこで育まれた優れた温泉文化があります。それを継承する若者を育てること、それが私の将来の夢である「旅館の暖簾分け」につながります。

 

言葉の壁、文化の壁を乗り越えたい

少子高齢化社会を迎え、今後、国内のお客様にだけ目を向けていては、旅行客の減少に歯止めをかけられない危機感を持っています。今までの経験から、冬の時期(12月~2月)は、国内からの来客が減る傾向があります。しかし、海外に目を向けると、中華圏の文化では旧正月をお祝いする文化があり、それがちょうど国内のお客様が減少する時期に重なります。

 つまり、海外のお客様にご来館いただければ、安定した収入の確保につながります。海外からのお客様を迎えるにあたり、言葉の壁とお客様が本来持っている文化や風習への理解は、大きな課題となります。そこでネパール人や中国人のスタッフをはじめ、中国からのインターン生を3か月間受け入れています。


 

海外からのお客様の「情報発信基地」へ

 海外のお客様が、日本の「活きた情報」を手に入れられる場所があること、それは観光を楽しんでいただく上で大変重要です。残念ながら、現在はそのような場所がありません。私の旅館が、海外のお客様にとっての「情報発信基地」になれるような準備を進めていきます。

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  • これから創業に挑戦する人へ一言

目の前のチャンスを逃さないこと

 例えとして適切ではないかもしれませんが、500円だけ握りしめて回転寿司に行ったとします。ウニが大好物なのですが、ウニを食べるとこの500円は、一皿で消えてしまいます。これが100円均一の回転寿司であれば、5皿食べられますね。しかし、このお店のウニがどうしても食べたいのです。

 そんな時に大将が、ウニをポンとレーンに流してくれました。その大好きなウニが目の前にあるのに、取るか取らないか…、これがまさに創業に挑戦することなのです。もし悩んで取らなければ、隣の人が食べてしまうかもしれません。万が一、この隣の人が食べなかったとしても、1周したウニの鮮度は落ちていることでしょう。2周すれば更に、落ち、3周、4周した時には、もう食べられる状態でないかもしれません。つまり、私が思うのは、チャンスを逃さないことです。そのために、アンテナを高く張っておくことが、非常に大事だと思っています。

 

人を大切に、ご縁を大切に

 私は、ご縁を大切に今まで生きてきました。人とのご縁、金融機関とのご縁、取引先とのご縁、このご縁が非常に重要です。やはり創業するにあたっては、人を大切にすることも忘れないでほしいと思います。

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